再生医療による脳卒中治療は治験段階へ。失語や麻痺の機能改善へ期待高まる!

再生医療による脳卒中治療が治験段階へ!
「脳卒中の障害や後遺症により、失語や麻痺で車いすの生活を余儀なくされる…」
このような患者様を私は病院でずっとみてきました。
リハビリによる機能回復はあるものの、全てが元通りの生活に戻るのは現状では難しいと言えるでしょう。

「再生医療で脳卒中の障害はどうにかならないのだろうか?」

この理想を現実にしようと、日本では2017年より脳卒中患者への再生医療を用いた治験治療が始まっています。

脳卒中とは?
テレビの医療番組ではしばし、「脳卒中」という言葉が使われていますね。

「ではそもそも脳卒中とはどんな病気の事をいうのですか?」

この質問をすると意外と答えられない方が多かったりします。
脳卒中を簡単に説明すると、

「脳の中に何かの障害が起き、血流が途絶えてしまう病気」

と言えます。具体的には、

・脳の血管が詰まる「脳梗塞」
・脳の血管壁が破れる「脳出血」
この2種類に大別されます。

実はこの脳卒中という言葉、医療現場では殆ど使われません。
なぜなら脳梗塞と脳出血で処置や治療方法が全く変わってきてしまうので、医師は脳卒中と言われても困ってしまうわけですね。

失語や麻痺になってしまう仕組み

「なぜ失語になったり麻痺になったり人それぞれ症状が違うのでしょう?」
疑問に思われませんか?
実は脳には記憶や人格をつかさどる役割だけでなく、

・身体を動かす指令を出す「運動野」
・言葉考え、理解する「言語野」

が分かれて存在しています。
脳梗塞や脳出血により血流が障害された部位が運動野か?言語野か?それによって大きく障害の出方が変わってくるわけですね。

残念ながら血流が途絶えて壊死してしまった脳細胞は元に戻りません。
なので、一度障害が発生してしまうと後遺症として一生障害とつきあっていくことになってしまいます。

では再生医療でどんな治療をするのか?
再生医療は幹細胞という、「どんな細胞にもなれる万能細胞」を使います。
詳しくは、「再生医療とは?」の記事をご覧ください。

では幹細胞をどこから用意するのでしょうか?
他人の幹細胞を使ってしまうと、拒絶反応が起きてしまう可能性があるのでご本人様が持つ幹細胞を使うことになります。輸血のようにはいかないということですね。

幹細胞が存在するご本人の腸骨(骨盤の一部分)より幹細胞を取り出して、培養増殖。
必要とされる細胞数まで増えたところで、脳内へ直接移植という治験治療が行われました。

実用化はいつから?
恐らく現段階では治験数を増やしていき、有用といえるかどうか研究段階でしょう。
確かなエビデンスが得られれれば脳卒中の治療方法として確立されることになります。しかし法的な問題や技術的な普及時間も考慮すると実用化になるまではまだもう少し時間がかかるかもしれませんね。
今後の再生医療による脳卒中の治療に期待して待ちましょう!

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